遅れて薫る金木犀と、引き算の妙なる塩焼売
文責:京・しゅうまい奉行(2025年 霜降の頃)
今年の京は、季の歩みがいささか乱れ申した。
例ならば彼岸の頃より町の辻々に満ちる金木犀の甘香、
それが一月あまり遅れて、霜降を越え今まさに盛りと相成ったのである。
夏の名残が長きにわたり、木々も季を読みかねたのであろう。
されど、天の機嫌に逆らう道理なし。遅れて訪れし秋もまた、風雅のひとつ。
甘香、胸の奥に灯るもの
夜気ひややかにして、香立つ時の静けさよ。
金木犀の香は、鼻に触れるにとどまらず、心の戸をそっと開く。
幼き日、夕暮れの帰り道、あるいは誰かを想いし刻――
香りは、記憶に火を点ずるものにて候。
香の余韻ののち、膳は潔し
さて、甘香が行き届いた後の膳は、引き算が肝要。
重ねず、飾らず、素材の真と向き合う。ゆえにここは、
京都点心福「塩焼売」を所望いたす。
国産豚と玉ねぎの旨を、塩にて凛と立たせる。
湯気立つ一口、ふわりとほどけ、後味は静かに消える。
甘き香の余白に、清き旨みが寄り添い、まこと見事な調和なり。
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香りを吸い、茶をすすり、塩焼売を一つ――
それでよい。秋は、急がずとも味わえる。
