福福通信|しゅうまい奉行公式ブログ
2025.11.14
冬みかんで拵える陳皮の作り方と効能|鬼辛焼売の香りを陰で支える妙味【京都点心福】

冬みかんで拵える陳皮の作り方と効能──
鬼辛焼売を陰で支える妙味
立冬を越え、京の風がきりりと冷え込んできた頃合い。 この季こそ、みかんの香りが冴え、陳皮(ちんぴ)を仕込むに最上の時にござる。 果肉を楽しみ、皮を宝とする――昔より伝わる知恵にて候。
■ 陳皮とは ― 時が育てる“香りの妙薬”
陳皮とは、みかんの皮を干し、時の力でもって香りを熟させたもの。 気の巡りを助け、胃の働きを整え、香りは心を鎮める―― 古より愛される妙なる素材でござる。
■ 奉行が伝える 陳皮づくり五ヶ条
一、白き面(内側)を天に向けて干す
白いワタは水気多く、カビの温床。 ゆえに、陽をしっかり当てるため白面を上にするべし。
二、皮を軽く“反らせて”干す
丸い形のまま干すと重なりが生じ、乾きにムラが出る。 反り返らせて風を通し、均一に乾かすのが上策でござる。
三、皮同士は決して重ねぬ
重なりは湿りを呼び、ただちにカビの口を開く。 並べる際は間を空け、風道を確保いたすべし。
四、夜露は断固として避ける
日中は外で陽を浴び、日暮れには屋内へ。 この日々の積み重ねが、香りを磨き上げるのでござる。
五、最後は“時”に任せる
干して三ヶ月で香りが丸みを帯び、一年で深みを得る。 陳皮は、時が仕立てる香りの宝にござる。
■ 鬼辛焼売に陳皮が使われる理由
京都点心福の「鬼辛焼売」には、この陳皮がひそかに潜む。 唐辛子の烈しき辛味に、柑橘の清香が刃のごとく走り、後口を整えるためにござる。
辛味のみならず、香りに品を添え、 「また食べとうなる」余韻をつくる―― まさに隠し味の妙技にて候。
■ 冬のみかんは“二度旨い”
冬みかんは果肉も旨し、皮もまた宝。 陳皮に仕込めば一年使え、しかも市販品よりはるかに安価。 冬こそ、陳皮の仕込み時にござる。