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2025.10.17

空を包むしゅうぱん ― 余白のうま味、京の発想|京都点心福

空を包むしゅうぱん ― 余白のうま味、京の発想|京都点心福
空を包むしゅうぱん ― 余白のうま味、京の発想|京都点心福

🍶 空を包むしゅうぱん ― 余白のうま味、京の発想

十月も半ばを過ぎ、朝夕は霧のような冷えを帯びてまいった。蒸籠の蓋を開けば、ふわりと立ちのぼる湯気がまるで秋の霞のように柔らかく包み込む。その中に、ひときわ異彩を放つ“新しき点心”がある――しゅうぱんである。

包むもの、されど中身は空なり

このしゅうぱん、見た目はまるで肉まんのよう。されど中身は“あん”を詰めぬ。空洞を包むのである。

空を包むとは何とも不思議なことよな。だがそこにこそ、京の余白の美が息づいておる。無を包むことで、焼売を入れたとき初めて完成する。つまり、中を欠いた形こそ、次なる旨味を迎える器なのじゃ。

焼売を待つ器 ― 余白の哲学

拙者、幾度となく点心を包んできたが、“包む”とは、ただ閉じ込めることにあらず。素材を活かす空間をつくることに他ならぬ。

このしゅうぱんは、まさにその究極形。焼売を中に入れ、蒸すことで空洞がふくらみ、その柔らかな白雲が焼売の旨味をやさしく包み込む。つまり、「空洞」は欠落ではなく、旨味のための余白なのだ。

現代の厨房にも通ず ― 時短とやわらかの理

現代の厨房においては、電子レンジという“新しき火”が活躍する。しゅうぱんは中身が空ゆえ、短時間で蒸気が通り、ふんわりと温もる。冷凍庫から取り出しても、すぐ柔らかに。まさに禅とテクノロジーの融合と申せよう。

空を包んで、心を満たす

焼売をひとつ忍ばせれば、それはもう立派な一品。肉汁がじゅわり、パンがふんわり。齧れば、口の中に“空”がほどけ、“満ちる”のじゃ。

人もまた、余白をもってこそ豊かになれる。このしゅうぱんは、そんな心の空間を包む点心でもある。

包まぬことも、包むうち。
― シュウマイ奉行

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