なぜ焼売には「豚肉」なのか?の段

皆々様、面を上げられよ!しゅうまい奉行である。
香ばしい焼き目で食わせる餃子と違い、焼売は「百度の熱き湯気(蒸気)」だけで火を通す、いささかも誤魔化しの利かぬ一本勝負。蒸籠のフタを開けた瞬間、素材の匂いが湯気とともにダイレクトに鼻先へ届くゆえ、肉選びには深き理(ことわり)があるのでござる。
なぜ豚肉なのか。その極意をとくとご覧あれ!
其の一、クセのない「雌(メス)の肉」を選ぶべし
牛や羊を蒸すと、草や獣の強い匂いが湯気に混ざり、風味が重くなりすぎてしまう。その点、豚肉はもともと香りがとても穏やかでござる。さらにプロがこだわるのが豚の「性別」。きめ細かく柔らかい雌豚の肉は、雄特有の気になる匂いの心配がなく、澄んだ脂の甘みをもたらしてくれるのじゃ。


其の二、湯気と玉ねぎが引き出す「ご馳走の香り」
蒸籠を満たす熱い蒸気は、お肉の余分な生臭みをすーっと空へ押し流してくれる。その一方で、お肉のおいしい香りは豚の脂の中にぎゅっと留まる。そこへ刻んだ「玉ねぎ」の成分が合わさることで、食欲をそそる見事な香香(こうば)しさに化けるのでござる!
其の三、人の体温でサラリととろける「脂の質」
牛の脂(融点40〜50℃)は人の体温より高いため、冷めると白く固まって口の中に残ってしまう。されど、豚の脂は約33〜46℃と体温に極めて近い。口に入れた瞬間にサラリととけて肉汁となり、蒸したてはもちろん、少し冷めても舌の上で滑らかに旨味が広がるのじゃ。


其の四、お肉の力で「肉汁」を逃さぬ仕組み
豚肉は、塩を加えて適度に合わせることでタンパク質が手を取り合い、網目のような強い膜を作る。この膜が、熱で溶け出した脂とジューシーな水分をタネの中にしっかり閉じ込めてくれる。だからこそ、粗挽きのお肉の粒感を残しながら、噛んだ瞬間に肉汁がじゅわっと溢れ出すのでござる。

焦げ目に頼らぬ蒸籠の勝負。
匂い澄みわたり、体温でとろけ、旨味を抱え込む豚肉が選ばれるのは必然の儀!
皆々様も、湯気の向こうに宿る豚肉の妙、とくとご堪能あれ!
