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2025.05.16

【巣作りに励むつばめと共に、蒸籠もまた湯気を上げる】

【巣作りに励むつばめと共に、蒸籠もまた湯気を上げる】

 五月も半ばに入り、伏見の空にはつばめが高く舞い、軒下にて巣を編み始める姿が見られるようになりましたな。春の名残を惜しみながら、初夏の兆しが日々色濃くなるこの頃、空気にはどこかしら「風薫る」香気が漂っております。

つばめというもの、古来より吉兆の鳥として知られております。巣を作る家には幸運が訪れるなどと申しますな。されば、わが厨房の近くにもつばめが舞い込み、柱の上に小さき巣の土台を作り始め申した。その健気な働きぶり、まことに職人と通じるものがございます。

さて、本日、われら「京都点心福」の厨房にては、「だし焼売」四百五十個、「えび焼売」四百五十個――計九百個の仕込みをいたし申した。ふわりと湯気立つ蒸籠の中、香るのは昆布と鰹の一番だし、そしてぷりっと弾ける海老の旨味。どちらも、素材の良さを引き出すことを旨とした一品にござる。

この「だし焼売」、ただの変わり種と思うなかれ。関西の誇る「だし文化」を、点心に落とし込む挑戦でござる。素材の輪郭を保ちながら、ふんわりと包み込むような味わいに仕立てておる。その蒸し上がりの香りたるや、つばめの囀りに負けぬほど、心を弾ませるものでござろう。

「えび焼売」もまた、ただ海老が入っておるというにあらず。特製の塩糀と香味野菜で下味を施し、海老本来の旨味を立たせる工夫を凝らしておる。ひと口頬張れば、春の名残と初夏の気配が入り混じるような、移ろいの味が広がり申す。

そんな中、本日一句を詠み申した。

> 巣を結ぶ つばめの影に 風薫る
湯気立つ厨に 春を仕舞ひぬ



まこと、点心作りとは、春夏秋冬のうつろいに寄り添う営み。移りゆく季節を、ひと包みに込めるが如く、ひとつ、またひとつと包み上げるのでござる。蒸し上がるその瞬間に、わが職人たちの想いもまた満ちるのですな。

「春を仕舞う」という表現――これは季節の終わりを、ただ名残惜しく思うばかりでなく、その締めくくりを丁寧に行うという意味合いも込めておる。つばめが巣をつくり、新たな命の準備をするように、われらもまた次なる味、次なる季節に向けて、仕込みを重ねるのでござる。

厨房の柱に巣を作るつばめたち。見守る職人。立ちのぼる湯気。そして、手のひらに収まる一口の焼売。

どれもが、日々の営みのなかにある「ささやかな奇跡」。それを見逃さぬよう、心を澄ませ、手を動かす。それが、「点心職人」たるものの心得にござる。

本日もまた、つばめのさえずりに耳を傾けながら、心を込めて包みました。お客様の食卓に届いたその折には、春と初夏の狭間に吹く、あたたかな風を、ひととき感じていただければこれ幸い。

では、また明日、厨房にて。

――京都点心福 シュウマイ奉行 拝


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