2025.05.20
本日は、朝より厨房にて塩焼売の仕込みに勤しみ、五百個もの焼売を丁寧に包み上げ申した。
素材はすべて国産、塩のあんばいを見極めながら、皮の薄さと餡の密度に心を注ぎ申す。
蒸籠に立ちのぼる白き湯気、それはまるで職人の心を映すかの如く、静かに、たゆたう。
さて、昼下がり――包餡の手を止めて一息ついたその折り、窓辺に小さき来訪者、赤き甲羅のてんとう虫が一匹、ふいと現れ申した。
「おお、春の使者よ。かくも慎ましき姿に、我らの仕事もまた見守られておるのやもしれぬな」
てんとう虫は古来より吉兆とされ、農の神に守られし存在と聞く。
この焼売作りの場に迷い込んだのも、何かの縁に相違あるまい。
季節は「小満(しょうまん)」に入り、万物、しだいに満ちてゆく頃合い。
田には苗が揺れ、空には夏の気配がほの見え、虫や草花も息づきはじめる。
点心作りとは、かような自然の巡りを感じ取り、日々の営みに落とし込むことでございます。
見た目の派手さに頼らず、素材と技、心の重なりで勝負いたす。
本日の塩焼売もまた、地味にして深い味わい。
蒸し上がる湯気のなかに、季節の移ろいと職人の志が同居する一品と相成り申した。
いま、この瞬間にも、どこかで誰かがこの焼売を手に取り、温め、箸を運んでくださるやもしれぬ。
そう思えば、手を抜くことなど叶いませぬな。
明日もまた、一期一会の点心をこしらえる所存にて候。
――春の余韻と、夏の気配を同時に感じる、この不思議なる季節。
自然と共に生き、仕込みに励む日々に、改めて感謝申し上げ候。