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2025.10.08

【奉行仕立て】松ぼっくりは食せる——松の蜜と松の香り酒の秘法

【奉行仕立て】松ぼっくりは食せる——松の蜜と松の香り酒の秘法
【奉行仕立て】松ぼっくりは食せる——松の蜜と松の香り酒の秘法

奉行記:令和七年 神無月七日

【奉行仕立て】松ぼっくりは食せる——松の蜜と松の香り酒の秘法

山路に転がる松ぼっくり、飾りのみと侮るなかれ。若き青松を用い、しかと手順を踏めば—— 煮れば甘露、漬ければ香酒。本巻、拙者シュウマイ奉行が直々に指南仕る。

まずは心得——安全と選びの作法

  • 若い青松ぼっくり(未開の柔らかいもの)を選ぶこと。落下して久しいものは避ける。
  • 流水で念入りに洗い、短く熱湯にくぐらせてヤニ抜き・殺菌を行う(下茹で推奨)。
  • 渋味強ければ、下茹でを延ばすか、抽出液を改めて作り直すべし。
  • 妊娠中・授乳中・体調に不安ある方・乳幼児は摂取を控えるか、専門家へ相談のこと。

秘法其の一:松の蜜(蜂蜜風シロップ)

——「煮れば甘露、森の息吹は琥珀色に宿る」

用いる物(出来上がり約250ml)

材料分量覚書
若い青松ぼっくり(未開)10〜12個(200〜250g)手のひら大・やや柔らか
500ml抽出用
砂糖(グラニュー or きび)250gきびは風味まろやか
レモン汁小さじ1香りと保存性を整える

仕立て方

  1. 下ごしらえ:丁寧に洗浄し、沸騰湯で5分下茹で。冷水でさっと洗いザル上げ。
  2. 抽出:鍋に水と松を入れ中火→沸後弱火で40〜60分。液が淡琥珀になればよし。
  3. 甘味を合わせる:松は入れたまま砂糖投入。弱火で30〜40分煮詰め、とろみ出たらレモン汁で香りを締める。
  4. 保存:熱きうちに清潔瓶へ。冷蔵で約3か月持つ。

召し上がり方

  • ヨーグルト・パンケーキ・紅茶・ホットミルクに一さじ。
  • 淀大根の大根餅に薄く塗り、表面を軽く炙れば、甘香と香ばしさが見事に調和。
  • 湯割りにして“森の茶”として愉しむも良し。

秘法其の三:松の香り酒(松の露)

——「漬ければ清香、火の辛味も風のように静まる」

用いる物(出来上がり約400〜450ml)

材料分量覚書
若い青松ぼっくり3〜5個(約100g)未開で柔らか
焼酎(35度前後)または日本酒500ml米・麦・甲類が馴染む
氷砂糖50g抽出安定と角の取れた甘味
レモン皮(好み)1片香りを明るく

仕立て方

  1. 下準備:流水で洗い、熱湯へ1分。水気はきっちり拭い去る(ここ肝要)。
  2. 漬け込み:広口瓶に松と氷砂糖を重ね、酒を注ぎ密閉。冷暗所で養生。目安は1週で色づき/2〜3週で香り立つ
  3. 仕上げ:松を引き上げ、茶こしやガーゼで濾して瓶詰。冷暗所で半年〜1年熟成可。

いただき方

  • 冷やして直に:森の清香をそのまま。
  • お湯割り:香りふくらみ、体あたたまる。
  • 鬼辛焼売のお供に:清香が辛味の尾をすっと整える妙技。

※お酒は二十歳になってから。過ぎたるは及ばざるが如し。

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結び——奉行言上

松は常緑、香は一瞬。ゆえに手順正しく、その瞬間を器に封じるべし。かくて膳は整い、京の湯気は森の息吹と交わる。——以上、奉行の直伝なり。