まずは心得——安全と選びの作法
- 若い青松ぼっくり(未開の柔らかいもの)を選ぶこと。落下して久しいものは避ける。
- 流水で念入りに洗い、短く熱湯にくぐらせてヤニ抜き・殺菌を行う(下茹で推奨)。
- 渋味強ければ、下茹でを延ばすか、抽出液を改めて作り直すべし。
- 妊娠中・授乳中・体調に不安ある方・乳幼児は摂取を控えるか、専門家へ相談のこと。
秘法其の一:松の蜜(蜂蜜風シロップ)
——「煮れば甘露、森の息吹は琥珀色に宿る」
用いる物(出来上がり約250ml)
材料 | 分量 | 覚書 |
若い青松ぼっくり(未開) | 10〜12個(200〜250g) | 手のひら大・やや柔らか |
水 | 500ml | 抽出用 |
砂糖(グラニュー or きび) | 250g | きびは風味まろやか |
レモン汁 | 小さじ1 | 香りと保存性を整える |
仕立て方
- 下ごしらえ:丁寧に洗浄し、沸騰湯で5分下茹で。冷水でさっと洗いザル上げ。
- 抽出:鍋に水と松を入れ中火→沸後弱火で40〜60分。液が淡琥珀になればよし。
- 甘味を合わせる:松は入れたまま砂糖投入。弱火で30〜40分煮詰め、とろみ出たらレモン汁で香りを締める。
- 保存:熱きうちに清潔瓶へ。冷蔵で約3か月持つ。
召し上がり方
- ヨーグルト・パンケーキ・紅茶・ホットミルクに一さじ。
- 淀大根の大根餅に薄く塗り、表面を軽く炙れば、甘香と香ばしさが見事に調和。
- 湯割りにして“森の茶”として愉しむも良し。
秘法其の三:松の香り酒(松の露)
——「漬ければ清香、火の辛味も風のように静まる」
用いる物(出来上がり約400〜450ml)
材料 | 分量 | 覚書 |
若い青松ぼっくり | 3〜5個(約100g) | 未開で柔らか |
焼酎(35度前後)または日本酒 | 500ml | 米・麦・甲類が馴染む |
氷砂糖 | 50g | 抽出安定と角の取れた甘味 |
レモン皮(好み) | 1片 | 香りを明るく |
仕立て方
- 下準備:流水で洗い、熱湯へ1分。水気はきっちり拭い去る(ここ肝要)。
- 漬け込み:広口瓶に松と氷砂糖を重ね、酒を注ぎ密閉。冷暗所で養生。目安は1週で色づき/2〜3週で香り立つ。
- 仕上げ:松を引き上げ、茶こしやガーゼで濾して瓶詰。冷暗所で半年〜1年熟成可。
いただき方
- 冷やして直に:森の清香をそのまま。
- お湯割り:香りふくらみ、体あたたまる。
- 鬼辛焼売のお供に:清香が辛味の尾をすっと整える妙技。
※お酒は二十歳になってから。過ぎたるは及ばざるが如し。
結び——奉行言上
松は常緑、香は一瞬。ゆえに手順正しく、その瞬間を器に封じるべし。かくて膳は整い、京の湯気は森の息吹と交わる。——以上、奉行の直伝なり。