令和七年十月十三日(寒露次候)/伏見・濠川にて
秋の濠川に舞う羽黒蜻蛉(ハグロトンボ)
― 京都点心福・シュウマイ奉行 見聞録 ―

本日、伏見の濠川を歩いておった折、黒き羽をひらりと翻す蜻蛉に出会い申した。陽の光に透け、羽は絹のごとく艶やか。風を裂くことなく、ただ流れに溶けて舞う――。
それこそが、羽黒蜻蛉(ハグロトンボ)。古より「仏トンボ」とも呼ばれ、魂の帰る時期に姿を見せると伝わる。伏見の清らかな流れにふさわしき、静けさを象徴する生きものにて候。
一、黒羽の舞 ― 水の都・伏見の秋
この季節、濠川の流れは澄み、薄紅葉が風に揺れる。その間を行き交う黒羽の蜻蛉は、まるで秋そのものが舞っているようでござる。川面に映る姿は墨絵のように静かで、見つめていると心のざわめきが洗われる思いがいたす。
二、職人の仕込みもまた静寂の芸なり
拙者が工房で点心を包む折もまた、この蜻蛉の舞を思い出す。焼売も餃子も、ただ速く包めばよいにあらず。音を立てず、心静かに手を運ぶことで、味が整い、湯気が澄む。
――静けさの中にこそ、真の美は宿るのじゃ。
黒羽舞う 川面に映えて 月細し
風も言の葉も 静まりかえる夜
(濠川にて、シュウマイ奉行)
三、京の流れ、味の流れ
伏見は古来より「水の都」と呼ばれ、この流れが人と文化と味を育んでまいった。拙者ども京都点心福も、この清流のごとく、穏やかに、誠実に味を届けておる。
どうぞ、京の湯気をそのまま食卓に――。
― 伏見・濠川の風より、京の湯気をお届けいたす ―