2025.10.30

ふむ……秋もいよいよ深まり、柿が黄金に染まる頃。
      京の町ではこの果実をただ食すにあらず、酒と酢に仕立てて冬支度を整える習わしがあるのじゃ。
      今宵はその「柿酒」と「柿酢」の妙、そして拙者が手掛ける焼売との相性を語って進ぜよう。
 
    熟れた柿を皮ごと刻み、氷砂糖と共に瓶へ沈め、静かに月日を重ねる――これが柿酒の作法にござる。
      やがて酒は琥珀に染まり、柿の芳香がふんわりと立つ。飲み口はまろやか、梅酒より軽やか、まるで秋の夕陽のように柔らかに舌を照らすのじゃ。
      ロック、炭酸割り、湯割り……いずれも乙な味わいでござる。
| 点心 | 楽しみ方 | 
|---|---|
| 海老焼売 | 柿酒を一献。海老の甘香と柿の香が寄り添う絶妙の調べ。 | 
| 塩焼売 | 炭酸割りと共に。潔き塩味に果実の余韻が映える。 | 
完熟の柿を潰し、甕に入れて寝かす。やがて自然の酵母が目覚め、柿酒を経て柿酢となる。
      穀物酢よりも刺の少ない柔らかき酸味、そして果実の甘みがほのかに残る――まさしく“自然が造る京の調味”にござる。
      酢の物や白和えに、または焼売の仕上げに一滴落とすと、風味がふわりと引き立つ。
| 点心 | 楽しみ方 | 
|---|---|
| だし焼売 | 柿酢を少量添えて。だしの旨味と果実の酸が調和する逸品。 | 
| 昔ながらのシュウマイ | 柿酢に醤油を少し。香り高く、秋の膳にふさわしき味わい。 | 
柿酒は心を和ませ、柿酢は身を整える。
      どちらも自然の力が時を重ねて生み出す、まこと尊き京の知恵にござる。
      焼売の湯気とともに一献傾ければ、秋の夜はさらに深く、美しき余韻を残すことであろう。
      
――これぞ、京の秋を味わう奉行流の膳なり。