2025.05.09
〜辛焼売仕込み記〜
朝の霧が山を包み、伏見稲荷の千本鳥居には、うっすらと湿り気を含んだ風が吹いておった。
鳥居の朱は、雨露に濡れていっそう艶やかに、その姿を揺らしておる。
「赤き炎」とは、まさにこの色よ。
本日、拙者が仕込むは、辛味と旨味が絡み合う、赤き魂の焼売──名付けて「辛焼売」にござる。
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辛味とは、味覚に非ず。
それは感覚、いや、精神をも突き動かす、戦(いくさ)の如き刺激なり。
拙者、この焼売に込めたるは、ただ辛いだけの刺激にあらず。
国産豚のもちもちとした旨味に、一味唐辛子の奥深き辛さを纏わせ、食す者の舌にじんわりと沁み入るよう仕立てておる。
豚肉は、丹波より届きし新鮮なもの。
細挽きにして、脂と赤身の比率を吟味し、舌に残る甘みを残しつつも、辛味の引き立て役とす。
一味唐辛子は、京都の老舗より取り寄せた極上の粉。
細やかでありながら、粒に艶と香りがあり、ひとつまみで場が引き締まる、まさに「和の火薬」にござる。
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さて、拙者、朝より450個の仕込みにあたり、白き包丁布を正し、神棚に一礼。
これは料理にあらず。まさしく一対一の勝負。豚肉と、唐辛子と、人の手の戦場なり。
練りの段階では、肉の温度と唐辛子の配合が肝要。
一度でも熱が入りすぎれば、脂が分離し、辛さが鈍る。
かといって唐辛子を先に混ぜれば、肉が怯む。まるで主従が逆転するが如し。
「これぞ職の極意よな……」
己に言い聞かせつつ、木べらで餡を練る音が、厨房に響く。タン、タン、タン……。
まるで太鼓を打つが如きリズムにて、辛焼売の魂が練られていく。
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蒸しの時。
熱気に包まれた蒸篭から、ふわりと立ち上がる唐辛子の香り。
ただ刺激的なそれではない。
土のような滋味、鼻の奥に残る香ばしさ、そして何より、豚の脂と交わったときにだけ現れる甘辛さ──
「……これは、酒が欲しくなるのう」
と、思わず呟いたこと、記録に留めておこう。
実際、この焼売、冷やした酒との相性は抜群。
米の旨味を引き立て、辛さの余韻が酒の後味と重なり、ふた口、三口と盃が進むこと間違いなし。
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伏見稲荷の赤鳥居は、願いと祈りの数だけ立てられしもの。
この辛焼売もまた、拙者の願いが込められておる。
「一口食せば、魂が目覚める焼売たれ」
「辛さの奥に、和の情緒と滋味深き旨味を宿すべし」
その誓いのもと、皮一枚、包みのひだひだに至るまで、妥協なく仕上げたる逸品なり。
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「辛いもん苦手やし……」と、恐れるなかれ。
この辛焼売は、ただ舌を焼く辛味にあらず。
じわりと体を温め、食後にほんのり残る心地よき刺激。辛さの中に慈しみあり。
拙者は申す──
辛さは剣。使い方ひとつで、人を傷つけるも、守るもできる。
この焼売は守る側なり。
冷えた心も、疲れた身も、ひとくちで熱くなるような、そんな力を秘めておる。
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是非とも、諸氏の膳に、この「赤き焼売」を並べていただきたい。
友と語らう宵、あるいは孤独な夜の盃の友として。
伏見の千本鳥居に宿る朱の如く、舌に、心に、燃ゆる味わいを。
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これにて本日の記録を終える。
次なる仕込みの際にも、また筆を取ろう。さらばじゃ──!
――シュウマイ奉行 拝