一、秋冷ことのほか厳し――季節の機嫌を読むの段
昨日より風急に冷え、伏見の朝はきりりと身を切るほどにござる。温度と湿度が変われば、だしの立ち方も蒸し上がりもおのずと表情を改むる。季節の機嫌を読むは、台所の者の嗜みなり。
二、「原料に勝る技術なし」――胸に刻む戒め
蔵の門にて見たる一文、まさに至言。「いかに技を尽くせど、素材の力を越え得ず」。まず選ぶ、ついで守る、そして活かす。華美なる手数より、質実なる見極めこそ要にて候。
技とは、味を盛り立てる采配にして、素材の良さを邪魔せぬ作法――これぞ職人の分別にござる。
三、点心仕立ての極意――やり過ぎぬ、足し過ぎぬ
焼売ひとつ取っても同じこと。国産豚の甘み、香味の気配、皮のたわみ――それらが最良の座に着けるよう、挽き目、塩梅、練りと温度、蒸気の粒まで調え申す。やり過ぎぬほど輪郭は冴え、足し過ぎぬほど旨みは立つ。
四、寒さは味方――“湯気”こそ馳走
冷え込み深まる折は、湯気そのものがご馳走。蒸したての香は高く、舌ざわりやわらか。器も盛り付けも、冬支度にほんの少し寄せるが肝要。それが季節の設計というものにて候。
拙者、これより一層「原料に勝る技術なし」を旗印に、素材を敬い、手を尽くし、日々包み上げ申す。何卒ご期待あれ。
