福福通信|京都点心福公式ブログ

2025.10.24

原料に勝る技術なし――伏見の冷ゆる秋に誓う職人の心|京都点心福

原料に勝る技術なし――伏見の冷ゆる秋に誓う職人の心|京都点心福

原料に勝る技術なし――伏見の冷ゆる秋に誓う職人の心

きのうより急に冷え込み、空気いよいよ凜として候。冬の気配ただよう伏見にて、拙者、点心奉行が職人の原点をあらためて胸に刻み申した。

記:2025年10月24日 / 類:覚え書き

伏見・濠川沿いに佇む酒蔵の景、秋冷の空気に湯気のごとき靄が立つ

一、秋冷ことのほか厳し――季節の機嫌を読むの段

昨日より風急に冷え、伏見の朝はきりりと身を切るほどにござる。温度と湿度が変われば、だしの立ち方も蒸し上がりもおのずと表情を改むる。季節の機嫌を読むは、台所の者の嗜みなり。

二、「原料に勝る技術なし」――胸に刻む戒め

蔵の門にて見たる一文、まさに至言。「いかに技を尽くせど、素材の力を越え得ず」。まず選ぶ、ついで守る、そして活かす。華美なる手数より、質実なる見極めこそ要にて候。

技とは、味を盛り立てる采配にして、素材の良さを邪魔せぬ作法――これぞ職人の分別にござる。

三、点心仕立ての極意――やり過ぎぬ、足し過ぎぬ

焼売ひとつ取っても同じこと。国産豚の甘み、香味の気配、皮のたわみ――それらが最良の座に着けるよう、挽き目、塩梅、練りと温度、蒸気の粒まで調え申す。やり過ぎぬほど輪郭は冴え、足し過ぎぬほど旨みは立つ。

四、寒さは味方――“湯気”こそ馳走

冷え込み深まる折は、湯気そのものがご馳走。蒸したての香は高く、舌ざわりやわらか。器も盛り付けも、冬支度にほんの少し寄せるが肝要。それが季節の設計というものにて候。

拙者、これより一層「原料に勝る技術なし」を旗印に、素材を敬い、手を尽くし、日々包み上げ申す。何卒ご期待あれ。

© 京都点心福 / Kyoto Tenshin Fuku