🌽 焼くべからず──紫とうもろこし、真の姿は湯気にあり
焼いて美味しゅうなかった――その経験こそ、食材の“本性”を見抜く第一歩にござる。
紫とうもろこし、されど侮ることなかれ。その真価、ここにお見せ仕ろう。
🔥 焼きとうもろこしにして落胆せし訳
ある日、拙者は紫とうもろこしを手に入れ、意気揚々と焼いてみた。
しかし、甘味は乏しく、皮は堅く、香ばしさも今ひとつ。
これは…「うまくない」と、素直に思うた。
だが、それは“失敗”ではなく“相性違い”――まさに食の奥深さを教えられたのである。
📜 紫なる黍(きび)、その血筋はインカの神穀なり
紫とうもろこし、別名「マイス・モラード」。その系譜は、はるかアンデスにて数千年の歴史を持つ神聖な穀物にて候。
紫色はアントシアニンによるもので、抗酸化作用にて知られ、現地では「チチャモラーダ」なる霊水として愛飲されておる。
🍹 和にも通ずる、チチャモラーダの妙
紫とうもろこしを芯ごと煮出し、果皮と香りを調え、甘味と酸味で仕上げる――
それがチチャモラーダにてござる。
日本の夏にも合うよう、柚子とりんごを添えた“和仕立て”の作り方をご披露申す。
《紫とうもろこしと柚子のチチャモラーダ風》
📦 用いるもの(3〜4人分)
- 紫とうもろこし(芯つき)…1本
- 水…800ml
- りんごの皮…1個分
- パイナップルの芯または皮…1/4個分
- シナモンスティック…1本
- クローブ…2〜3粒(お好み次第)
- 柚子皮…少々
- 砂糖または蜂蜜…大さじ2〜3
- レモン果汁…大さじ1〜2
👨🍳 拙者流・仕込みの手順
- 鍋に水・とうもろこし・果皮・香り物を入れ、30分以上静かに煮出す。
- ざるで濾し、冷ます。
- 甘味を整え、最後にレモン果汁を加え冷やして供す。
🥟 点心との合わせは、かように粋でござる
このチチャモラーダ、点心との相性は抜群なり。以下のごとく、組み合わせ次第で“京の宴”にもなる。
紫とうもろこしの型 | 合わす点心 | 旨さの理(ことわり) |
---|---|---|
チチャモラーダ(冷) | 肉汁焼売・塩焼売 | 旨味を洗い、次を誘う |
柚子入り仕立て | 海老水餃子(冷菜) | 海老の甘みを引き立てる |
粉を蒸し生地に練り込む | しゅうぱん | もち感と彩りが増す |
粒を刻みて具に | 変わり春巻 | シャキッとした歯応え |
おこわ仕立て | 焼売・餃子セット | 主食に彩りと滋味を |
✅ 結びに代えて──焼かぬが極意
焼いてうまからずとも、道は開ける。 紫とうもろこしは、煮て、蒸して、香らせてこそ活きる素材にて候。
見た目に惑わされず、香りを読み、湯気に心を澄ませば、一つの素材が、世界を広げてくれる。 焼かずに活かす――それもまた職人の矜持にござる。